10月度定例会(中小企業経営の現場で学んだこと 講師:田邉 大 会員)


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10月の定例会の中心は、田邉会員(株式会社ティーコミット 代表取締役)による報告でした。柔らかく親しみやすい人柄を感じさせながらも、逆境の中で創意工夫を重ねて事業を伸ばした経験と、そこで掴んだ経営哲学、そして中小企業診断士として改めて自らの経営を振り返った内容は、実体験に基づく迫力あるものでした。

田邉氏は1998年に印刷会社に入社し、30代前半で取締役、2020年に代表取締役に就任。印刷市場が1990年代のピーク時から約4割縮小する中、2023年に退任するまでに売上高を6倍、従業員数を5倍に伸ばし、粗利益率40%、経常利益率5~10%を確保する会社へと成長させました。

特に参加者の関心を集めたのは、田邉氏がリーダーとして進めた会社を成長させるための戦略的な方向転換に関する取り組みです。

1)保険業界の知識を徹底的に習得し、他社商品の比較分析から販促企画の立案までを担う「業界専門特化戦略」

2)単なる印刷業者から顧客のビジネスに不可欠なパートナーへ転換するため、目先の受注額より受注内容を重視する「クライアントとの関係改革」

3)Web・動画・システム開発、BPO、保険代理店開業などに取り組む「事業領域の拡大」

4)経営方針の明確化と浸透、人材育成、人事制度の整備に加え、独自の福利厚生も導入した「組織と風土の改革」

など、次々に改革を進められました。

そして2023年、代表を退任後、「孤独を抱える経営者の力になりたい」との思いから独立され、2025年に中小企業診断士として登録されました。会社名の「ティーコミット」には「助言で終わらず、実行段階まで共に取り組み成果にコミットする」という思いが込められています。

診断士の目で当時を振り返ると、保険業界への特化や事業領域の拡大など経営戦略レベルでは理論と合致していた一方、人材育成や組織の自立化は「道半ばだった」と組織運営の難しさも率直に語られました。そのうえで「外部の専門家にも相談すれば、もっと上手く経営できたかもしれない。お金を払ってでもその価値があった」との振り返りの言葉は、私たち診断士の存在意義を改めて考えさせるものでした。

参加者からは「理念や行動指針をどう浸透させたのか」「改革を共に進めるための社長の右腕をどう得たのか」「30代で経営を担った原動力は何か」などの質問が寄せられ、多くの中小企業に共通する課題について実践知を共有する場となりました。

現在は経営者としての経験を活かし、経営戦略・事業計画、営業・マーケティングを中心に、印刷業界・保険業界の支援に力を注がれています。

今回の報告は、経営者と中小企業診断士、両方の立場を経験した田邉会員ならではの視点から、中小企業診断士の支援のあり方を改めて考える貴重な機会となりました。

田邉会員、ありがとうございました。 (文責:平松 聡)

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