2026年9月20日 木村博紀
みなと横浜で事業を行っている事業者さま、
「生成AI」を使ったことのある人は、この2年で9%から59%へ急増しました(総務省「令和8年版 情報通信白書」)。企業でも、中小企業の32.4%、神奈川県内の企業でも31.4%がすでに業務で活用し、活用企業の9割近くが「効果あり」と答えています(帝国データバンク・2026年3月調査)。一方で、中小企業の65%は「会社としては未導入で、使うかどうかは個人任せ」という調査もあります(商工中金・2026年1月調査)。
今回の「横浜経営コラム」では、(1)何に使えるか、(2)使える公的支援、(3)安全に使う留意点、を概観します。


(1)何に使えるか
最も多い用途は「文章の作成・要約・校正」で、中小企業では「メール・報告書・議事録の作成・要約」が7割超。高度なことより「書く・まとめる・調べる」から始めるのが王道です。中小企業白書(2026年版)には、金属製品製造業(85名)で非エンジニアの専務が生成AIと対話しながら社内アプリを内製し月約530時間を削減した例や、光学機器商社(33名)で翻訳・要約や広告コピー案に活用し広告への反応が2倍超になった例が紹介されています。

(2)使える公的支援
「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金。補助率1/2〜2/3、5万〜450万円)は、AI搭載ツールも対象です。神奈川県の「小規模事業者デジタル化支援推進事業費補助金」(補助率2/3・上限50万円)、横浜市のデジタル人材育成講座と専門家の伴走支援もあります。まずは神奈川県よろず支援拠点やIDEC横浜、当会の無料相談をご活用ください(制度内容は申請前に公式サイトでご確認ください)。
(3)安全に使う「5つの約束」
IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」では「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織向け3位に初選出されました。企業の課題も「情報の正確性」(50.4%)、「情報漏洩」(33.5%)が上位です。①機密情報を入れない、②うのみにしない、③権利を確認せず公開しない、④禁止で終わらせず1〜2枚の社内ルールを作る、⑤小さく試して測る――この「5つの約束」(図解7)で、リスクは大きく下げられます。

(4)総括 ―― 「使うかどうか」から「会社としてどう使うか」へ
生成AIはもはや“珍しい技術”ではありません。社員の6割が触れ、中小企業の3社に1社が業務で使い、使えば9割近くが効果を実感する段階です。一方で65%が「個人任せ」のままで、課題の上位は「情報の正確性」「人材・ノウハウ」「ルール整備」と、技術ではなく“使い方”に集中しています。帝国データバンクも「導入そのものより、使いこなすための仕組みづくりが成果を左右する段階」と総括しています。中小企業白書(2026年版)では、AI活用に取り組む中小企業は付加価値額の伸びが23.0%と、取り組んでいない企業(17.9%)を上回り、「AX(AIトランスフォーメーション)は中小企業が大企業を追い抜くチャンス」と述べています。差がつくのは「使うかどうか」ではなく、「小さく試す→ルールを決める→仕組みにする」を会社として回せるかどうかです(図解6)。

今後1〜2年の見通し(筆者の見立て)
筆者は次の3つが進むと見ています。第一に、生成AIの役割が「文章を書く道具」から、メールの下書き・議事録・見積のたたき台まで一連の業務を任せられる「AIエージェント(AIの部下)」へ広がること。専用モデルやエージェントを導入した中小企業はまだ0.9%ですが、手の届く価格帯になりつつあります。第二に、公的支援がAI前提になること。IT導入補助金が「デジタル化・AI導入補助金」に改称されたのはその象徴です。第三に、情報セキュリティの専門家として特に強調したいのが、「安全に使えているか」が取引先から問われるようになること。AI事業者ガイドライン(第1.2版)やAI法の施行に加え、IPAの中小企業向けセキュリティガイドライン(第4.0版)が取引先を評価する「サプライチェーン対策評価制度」の考え方を取り込んだように、大企業の取引先管理は今後、AIの利用ルールにも及ぶでしょう。「うちはAIを禁止しているから安全」ではなく、「ルールを決めて使いこなしている」ことが信頼の条件になるでしょう。
だからこそ、2026年度のうちに「1業務で試す」「1〜2枚のルールを作る」「相談窓口を知る」の3つを済ませておくことをお勧めします。活用の壁は技術より「何に使うかイメージできない」(63.4%・中小企業白書2026年版)。ぜひご一緒に『みなと横浜』で、生成AIを“会社の力”にしていきましょう。
【コラム執筆者】
KSB経営サポート 代表 木村博紀(h.kimura@ksb-ms.com)
中小企業診断士、情報処理安全確保支援士
IT経営・DX・生成AI活用支援、情報セキュリティ体制構築支援、補助金申請支援